« 2ヶ月ぶり | トップページ | 今日もお散歩 »

2005年10月 2日

ストレス

自分も仕事のことなどで相当ストレスがたまってますが、(笑) 今、カワセミに与えるストレスについて考えさせられています。1ヶ月前から標識調査の話題を何度か取り上げましたが、日本の標識調査を疑問視する理由の一つが、カワセミに与えるストレスなんです。霞網にかかったとき、網から引き離すとき、手にとっていじくり回して写真撮影するとき、足環をつけるとき、そういうときに一体どれくらいのストレスを与えているのでしょうか? 実際放鳥する前に死んでしまうケースもあるようだし、死ぬまで足環をつけていなくてはいけないって、足環の重さにかかわらずストレスを与え続けているんじゃないでしょうかね。今まで紹介した虐待バンダーのように記念撮影するためだけに嘴を持ってぶらさげたり、無理矢理羽を広げたりするなどという行為は、全く論外で、もう話題にもしたくないですが、標識調査は与えうる最大限のストレスを与えていると思います。論外と言えば、本来の目的から逸脱して調査をイベント化し、捕獲した野鳥を大勢の人にさわらせたりしている極悪バンダーもかなり蔓延っているようです。身近な鳥で人気のあるカワセミは、絶好のターゲットにされているのかもしれませんね。捕まったら最後、ストレスで皆殺しとか・・・まさかそこまでひどい状態ではないと思いたいですが。

そもそも一年中、狭い縄張り内で行動しているカワセミに標識調査なんか必要ないんです。何故ならカワセミの保護に役立つと思われるデータは、別に標識調査による科学的な裏付けがなくても、日々の観察ですべて得られてしまうからです。寿命だって、行動パターンだって、生態や習性だって、個体識別だって、しっかり観察を続ければ分かります。ことカワセミに限っては、標識調査でなければ得られないデータなんてないし、仮にあったとしてもそれを具体的に保護に役立たせなければ何の意味も持たないでしょう。実際何十年も調査をやってきて、その結果をもとにカワセミ保護のために何か具体的に役立つようなことをやってきたんでしょうか。日本の標識踏査では、保護に向けた提言すらほとんど出されていないというのが実情のようです。それでは保護のための調査が、ただ虐待や殺害にしかならないでしょう。しかし保護のために何が必要かなんて、カワセミと何年か正面から付き合っていれば分かりますよ。調査に携わっている人たちって、観察や愛情が極端に不足しているんじゃないでしょうかね。
ところで皆さん、カワセミの寿命ってどれくらいだか知ってますか? 私が生態などをまとめたとき(「カワセミの魅力」)、日本の標識調査のデータも含め調べてみたんですが、正確な回答が得られませんでした、というか調査で寿命についても調べているはずなのにデータが公表されていないんですよ。それでドイツの資料を調べてみたら、簡単に分かりました。平均寿命は2年、といっても大半は2年未満ですが、5年生きられる確率はわずか2・3%、で、最長の記録というのが何と驚くなかれ15年と20日です。
これは100年以上前から行われているドイツの標識調査のデータによるものです。足環を付けられて15年も生きた例があるということは、足環なしだと20年生きる個体もいるかもしれませんが、そんな例外的な寿命のデータがあったとしてもカワセミの保護には不要でしょう。ドイツとでは生息環境は違いますが、全く同種のカワセミで、命を落とす要因も同じですから、こと寿命に関しては、そのまま日本に当てはめてもいいでしょう。少なくとも平均寿命が2年というのは、私の観察からも正しい数値です。
ちなみにドイツでは今でも標識調査は続けられていますが、日本との大きな違いは、具体的に環境保全や野鳥の保護活動に役立たせていることです。ま、犠牲になる野鳥も少しは報われているということですね。
とにかくもう足環を付けて寿命を調べるなんて必要はないんです、標識調査自体も必要ない、カワセミの寿命は短いんだし、これから必要なのはよりよい環境で生きられるようにしてあげること、具体的なカワセミ保護策だけですね。例えば河川や池の整備がどんどん進んで営巣場所が失われていく中、いつまでも野鳥保護を大義名分にして足環付けだけしていていいのですか? と、標識調査に携わっている人たちだけに、この保護に関する問いを投げかけていてはダメなんですよね。私たちカメラマンももっと意識的に保護について考えていかないと、いつの日かカワセミが姿を消してしまうでしょう。程度の差はありますが、標識調査がストレスを与えるから問題だと言うのであれば、私たちカメラマンも絶えずカワセミにストレスを与えているのだという自覚をしっかり持って接するべきだと、今更ながら思います。
3週間前に何度も通っている某公園の池に3番子が出てきたのですが、10日ほど前のピーク時に何と70人ものカメラマンが集まったそうです(巣立ち後は仲間内ではネットでの公開を控えるように申し合わせているんですが)。それを聞いただけでもう行く気もしなくなってしまいましたが、育雛時の大切な時期にそんなに大勢の人が、しかも公園なのでカワセミとの距離は近いし、一体どれくらいのストレスを与えてしまったんでしょうか・・・昨年の某川のヤマセミの営巣場所のことも思い出します。巣立ち前後には40台もの大砲が巣穴前に並んだそうです。ヤマセミの営巣場所にどうしてそんなに大勢の人が、と色々調べてみたら、巣穴の様子などを写真付きでリアルタイムに公開して人寄せするような人もいたんです。そういう人も含めて営巣場所に40人ですからね、ブラインド使用で対岸の巣穴まで50mくらいの距離はあったようですが、もっとも神経質になっているときでもあるし、多大なストレスを与えていたに違いないです。ちゃんと子育てができたんだからいいだろう、無事巣立ったんだからいいだろう、っていう問題じゃないですよね。それじゃ、私が以前から問題視している撮影目的の餌付けと同じレベルになってしまいますから。
とは言うものの、今までの自分のカワセミとの接し方を問いただしてみると、うむ、写欲が失せてしまいます。カメラマンが大勢集まるところへは、極力足を運ばないようにしているのですが・・・蓮カワ撮影のときも人の多い時間帯は避けて行ったつもりですが、それでも20名くらいいたときもあったし。このストレス問題、自分なりに整理してからでないと、撮影には集中できそうもないですね。明日も一日考え込んでしまうかな~、カワセミ病は決して癒えることはないし・・・
そそ、このサイトはカワセミ専門なので、標識調査に興味のある方は、以下のサイトへ足を運んでください。私は調査法として国際的に認められている標識調査自体には必ずしも反対していませんが、現行の日本の標識調査は問題点が多すぎるので、緊急に悪質バンダーが排除できるような制度の見直し、もっと成果が期待できるような調査法の改善などは必要だと思っています。

和田さんのサイト

投稿者 eisvogel : 2005年10月 2日 00:43

コメント

大変ご無沙汰しております。
ここにお書きの内容すべてについて同感です。
後段のカメラマンによるストレスについてはいつも自戒と気配りを忘れることが無いように心がけ、フィールドから帰えるたびに反省することをその日の締めくくりとしておりました。しかし、最近まで悪質バンダーについてはまったく無知で、その存在すら知りませんでした。それがあの2羽のカワセミの嘴をつかんでぶら下げる様子を掲載しているサイトを見て愕然としました。それも私のすぐ近くでこのようなことがされていたとは・・・
私には大したことは出来そうにありませんが、野鳥のサイトを運営しているものとして、この事実は紹介していきたいと考えております。

唐突ですが、感銘を受けコメントせずには行かなくなりました(^^;

投稿者 fukino : 2005年10月 3日 19:16

fukino さん、ご無沙汰です・・・コメント、ありがとうございます。
私、あの嘴を持ってぶらさげられた2羽のカワセミの目が忘れ
られま
せん。あれが調査の実態なら、やはり大きな問題でしょうね。

投稿者 eisvogel : 2005年10月 5日 07:38

コメントしてください




保存しますか?